2016年12月30日金曜日

愛しいもの、月の味

家族とのクリスマスも終えて、ぽっかりと時間が空いた年の末も末の末端。新月。やけに落ち着いた気分だ。で、やっとここに文章が書ける。

仲のいい女友達からSMSが届く。「あと5分で着くよ!」
それからまもなく、わたしのアパルトマンには赤い花のような笑顔の彼女とティラミスが届いた。ティラミスに目がないわたしとCyrilのために彼女が本場の味をと、手作りして届けてくれたのだ。
ほとんどイタリアのアクセントがない綺麗なフランス語を流暢に話す彼女は、ローマ出身である。彼女は赤がよく似合う。わたしたちはいろんなことを話す。最近読んで衝撃を受けた本について、美味しいピッツァについて、自分の心の癖について、小さな意地悪の原因について、なぜ男の人の多くは政治の話をし出すと止まらないのかについて、角のスナックで働いている髭のかっこいい男の子について、精神世界について、パリについて、今の世界について、興奮して眠れない夜について...etc
強いカフェを飲みながら、あるいは赤いワインを飲みながら。そしてあるいは極上のティラミスをほう張りながら。青い朝、白い午後、紫の夕暮れ、赤い夜。
この日食べたティラミスは、甘過ぎず、水分も多すぎず、食感も何もかも、今まで食べたどのレストランのものよりも最高に美味しいティラミスだった。



フランスに住み始めて1年と5ヶ月。ここ南仏にCyril以外誰ひとりも知り合いがいなかった始めの11ヶ月間から考えると、わたしの生活はがらりと変わった。知り合いも友達も、こうやって繰り返し何度も会って深い話ができる女友達も、笑い合ったり半ば本気で泣きそうになりながら慰めあったりできる女友達もできた。日本人の女の子たちの友達もできて、おかげでフランス語脳を少し休ませたり美味しい日本食にありつける機会も格段に増えた。小さいけれど自分で仕事をし始めだした。
相変わらず、日本にいる親友に無性に会いたくなって夜中に突然連絡したり、何か理由をつけてはパリの親友に会いにパリへ行くことは変わらないのだけれど、ここニースでの生活にも今までにはどこにもない愛おしさを感じるようになっている。無性に夏泳いでいた海の中が恋しくて恋しくて、水の中に潜って海中から太陽の光を見る感覚の白昼夢を見る。
そして、いつまでたってもわたしは女友達という生き物が好きでたまらないらしく、彼女たちに助けられている。もちろんCyrilにもw



これを書いている途中、パソコンでニュースを読んでいたCyrilがわたしに声をかける。「EUの法律で、3年後に綿棒の販売が禁止されることが決まったよ。綿棒が環境に悪いからだそうだよ。」
原発はOK。でも綿棒はNG。Quand mâme c'est exagéré, non?
ちぐはぐでバラバラで、ずれて、極端で、大げさだ。
フランスの小学校から歴史の授業が消えている。
世界はどうなっていくのだろう。



街の通り、湿気を含んだ生ぬるい風が狂ったように吹く夕暮れ。歩く人々はどこか興奮した様子を隠せず子供のように帰り時を急ぐ。
あるいは、太陽の凝視に耐え切れず、着込んだコートを思わず歩きながらぬいでしまう昼下がり。斜めに射す強い光の中、乾いた冬の木の香りが漂う。

潮風の匂い。月が海に映り出す。
濃いカフェの香りとワイングラスが重なる音。光の予感。愛しい街。

2017年も、愛しい日々の連続を♡
Bonne année!!