2017年2月6日月曜日

蘇る記憶、緑の世界

ある瞬間に突然、強烈に強い光のようなものに身体全体を奪われる、何か遠い昔のことと先の未来のことがぐわんと一瞬にして身体の中で入り混ざり、異様に頭がすっきりする、そんな感覚になることが、過去に一度あった。
そして先日、ある場所に一歩入った瞬間にまた、それが起こった。


古い瓶に貼られたラベル、書かれた植物の名前をそっと指先でなぞる。
スポイドからとろり、とろりと垂れる花のエキス。押しつぶしてしまわないように、乾いた葉たちをそろりと手のひらで掬う。ハーブを丁寧にすり潰す。目を瞑る。立ち昇る香りをゆっくり吸い込む。

身体を知る。自然に触れる。宇宙との繋がりを認識する。
蘇る記憶の欠片をスプーンで掬う。月の光を数滴とろりと垂らす。
小さな古い扉。首からさげたペンダント。鍵穴の埃を払い、そっとそれを差し込む。
月の光と緑のうたの世界。緑の指が誘う、書物との密会。


例の強くてそれでいて優しい光。それはその扉を開けた瞬間だった。

”月の香りを感じたり、黒色の官能を選んだり、揺れるスカートで現実を少し覆って、ひとりにやりと匂いに潜む秘密の記憶を楽しむ。アーモンドを少し齧る。言い訳の赤色を愛する指でぬぐってもらう。お湯の中に体を沈めて、耳までそっと入れる。目を閉じる。ろうそくの光が滲む水の色を味わう。揺れるリズムに身を委ねる。”

✳︎ずっと書けていなかったこと、「ホメオパシーのこと」はここからどうぞ✳︎

愛しい日々の連続を♡

色の旋律
Blue:冬の裾の色
Violet:紫のニュアンス
Entre Rose et Rouge:前髪から宇宙まで
Rainbow:魔女の色彩
Rouge : 赤の分量


ホメオパシーのこと

ずーっとずーっとここに書きたいなと思っていたまま、でも書けていないことがある。

わたしがここフランスに住み始めてとても強く感じる事柄はそれはもう数え切れないほどあるけれど、その中でも「食べ物のこと」とそして「医療のこと」については、真面目に日々考えさせられることが多い。こと医療については最近、わたしの中でむくむくと大きな何か動的なものになってきている。


フランスに越してきてすぐ、わたしは「ホメオパシー」と近くなった。夫の母は若い頃から自然療法に関心があり生活に取り入れてきている人で、 アーユルヴェーダ、中医学、ホメオパシーにも詳しい。

以前日本からフランスへ引っ越しをする一週間前に、わたしは左目にものもらいを患った。眼科医に駆け込み、目薬を処方してもらったものの日が経つにつれわたしの左目はどんどん膨れあがった。結局先生はプチっと針でつぶし、膿自体はなくなったものの、目の腫れは残りわたしはとりあえず処方されたステロイド入りの塗り薬を持ち、フランスへ入国した。約1ヶ月間目薬とその塗り薬を使っていたが相変わらず左目の腫れは残ったままだった。
わたしの左目を見た義母は、わたしにホメオパシーの薬をすすめてくれた。その時手にしたものが、わたしの生涯始めてのホメオパシーであった。

その当時のわたしのホメオパシーに対しての知識は、名前だけは聞いたことがあったものの、正直どんなものか具体的には全く知識はなく、自然療法の一環だというふんわりとしたものだった。しかも日本に居た当時の知人で、なぜだか狂信的にホメオパシーに反対している人がいて、その人は「ホメオパシーは宗教だよ!」なんてふれ回っていた。それに加え、自分で調べようにもその手のサイトはなんとなく論理性に欠け、天使が飛んでいるような変なデザイン(これはわたしの趣味の問題w)のサイト、というかブログが多かったので、わたしとしてはとりあえずよくわからない、触れないでおこうという感じだった。


日本では眉唾もの扱いされている感が否めないホメオパシーだが(日本のwikipediaの説明がすごい)、一方フランスでは医師の処方であれば健康保険から35%の還付が受けられる。ホメオパシー専門の医師になるには、西洋医学の一般医の資格を取得した上で、さらにホメオパシーの資格を取らなければならない。処方箋なしでも買えるホメオパシーは、値段も安く薬局で相談して誰でも普通に買うことができるので、昔からフランスの家庭では常備薬の一つとして、家の薬箱に何かしらのひとつやふたつホメオパシーの薬が入っていることが多いと聞く。わたしのフランス人の友人も使っている友達が多い。
ホメオパシーとは、「同種療法」と言われ、「症状を起こすものが、症状を消す」という基本概念から、症状を起こす物質を希釈して薄め、ごくわずかを体に与えることにより、身体の自然治癒力が引き出され、症状を軽減するということ理論である。

症状そのものを抑制する現代医学と違って、その原因そのものに着目し治癒していくという考え方。人だけでなく動物にも効果的なのは有名で、フランスでは獣医や家畜農業に携わる人にもよく使われている。そして現代医学の薬と違う大きな点は、副作用がないこと。ただし、レメディーとよばれる小さな砂糖玉の中にある物質は、科学的証拠が立証されず、効果を科学的には証明できない。効果も西洋医学の薬のようにすぐ実感できるものではなく(中には症状を治めるためにすぐ効果を実感できるものもある)、半年、一年と長期で取り組まなければならない。フランスでも賛否両論で、懐疑的な人も少なくはない。


しかしわたしの身体には、この”科学では証明できない物質、よくわからないもの”がなぜか合っているらしく、効果がテキメンに現れるのだ。フランスに来てから約1ヶ月、ステロイドを塗ってもひかなかった左目の瞼の腫れは、義母のくれたレメディーとホメオパシーの塗り薬で2日で見事になくなった。
それからあと続けて2、3の効果テキメンの症例があり、わたしはもりもりホメオパシーもっとよく知りたい欲にどっぷり浸り、気分を良くしたわたしはその後、少しずつではあるが本を参考にしながら自分の症状に照らし合わせ、自分の身体を使って人体実験を試み続けている。そして何より日本で普及しない理由には、どうやらいつも通り黒いわけがありそうだ。


わたしの夫には長い間(おそらく20年間ほど)患っている身体の症状があり、日本にいる間も彼はその症状にかなり悩まされていた。フランスに帰国後その症状の改善にと、ホメオパシー専門の先生にかかるようになり、約一年半たった今その症状は見違えるほどに改善している。そしてわたしも彼に便乗し、その医師にかかるようになったのだけれど、処方された薬を飲み始めてきっかり半年を境にいろいろな自分の長年持っていた症状、それも病院にいっても特に病気という診断はされない類のもの(例えばひどい末端冷え性や大人になっても治らない乗り物酔い、右半身にいつも現れる症状、消化の問題、何度も繰り返してきたぎっくり腰をともなう腰痛など)が見違えるほど軽減した。いつもゲロゲロになっていた義母の運転にも、今はケロリとしているので周りを驚かせている。


症状ではなく、根本にある原因そのものに働きかけていくという点で、ホメオパシーは現代医学と大きく違う。そしてその薬はもちろん、その”診断”に鍵があると言える。医師の知識や経験、そして患者の身体の状態をどこまで知る診断ができるかどうかということが大きく関係してくるので、夫は今まで5、6人ほどホメオパシーの専門医にかかったことがあるらしいが、やっと効果を実感できる薬を処方してくれる今のドクターに出会ったと言っている。なるほど、わたしたちの今のドクターは、ありとあらゆる質問をする。


日に日に強く思うのは、お医者さんまかせではなく、自分自身が医療に対してのある程度の知識を持って自分の病気や身体に対峙していくことが何より大切だということ。これはなにもホメオパシーに限ったことではない。
それからホメオパシーにこの一年半接してきて、なんとなくなのだけれど、頭の知識はもちろん、勘というのか感覚というのか、言葉ではうまく説明できないけれど、何かしら自分のエネルギーにきちんと意識を傾けて対話するセンスというものが必要なのではないか、と感じている。これはホメオパシーに限ったことではなさそうで、アーユルヴェーダや中医学にも通じていると思う。

身体のことを考えるなら、症状を治めることだけに意識を向けるのではなく、根本の原因を考えること。そして心と体はやはり、やはり密接に繋がっている。皮膚の外側と内側も同じ繋がりを持ち広がっている。
結局わたしは今そのことにまた戻り着いた。
大切な身体のこと、そこから広がることを、もっと深く知りたい。
それにしても、アーユルヴェーダに、中医学にって...道はなかなか長そうだ。

...ちなみに、ここには何度も書いているけれど、わたしは自分教以外の宗教には属していないw

愛しい日々の連続を。