その日は音楽のイベントで恋人と一緒に参加していた。イベントの終盤くらいでわたしは高揚した場所の雰囲気に少しのみこまれてしまったのか、少し気分が落ち着かなくなった。わたしの少し不安定な様子に恋人が気づき、何か温かい飲み物を持ってきてあげると言ってドリンクバーにたった。わたしは彼を待つ間、気持ちが落ち着くようにじっと座っていたが、ふとショコラのことを思い出し、鞄の中から取り出した。彼が戻ってきたので、「これ、さっきの女の人がくれたの。ショコラ。なんだかわからないけど、すごく強いらしい。食べてみる?」と聞いて、ふたりでそれを齧って食べた。黒胡椒が入っているのか、どこかピリッとして、ビターショコラにスパイスが効いた風味はわたしの好きな味だった。それは彼が持ってきてくれたカルダモンの温かいチャイにとてもよく合った。美味しいねこれ、なんて言いあっているうちに、気持ちがずいぶんと落ち着いた。
面白いな~と思う。何かを口に入れ、それを飲み込む。ただ単純なことだけど、それが自分の体と心に作用し、自分の肌を薄く覆うものを色づけ、そしてその外側にあるものに反映する。その口に入れた何かは一体何なのか、どんな旅をしてきたのか、誰から託されたものなのか、そういうものがすべて自分の内と外の境界に溶け込む。
ちなみにその強いワケは、マカがたくさん入っていたから。媚薬入りのそのショコラは、わたしにとって新しい旅の始まりのキーアイテムだった。そういう鍵をわたしに渡すのは、なぜかいつも決まって素敵な女性たちなのだ。
そうこうしているうちに、あっという間に年を越してしまった。2014年は、生活をすることと芸術に関すること、身体のことと宇宙のこと、男と女の関係と子供が大人になること、食べることと選択すること、癒すことと癒し合うこと、いろんなことを再発見したいい一年だった。それらは何か魔法が働いているかのようにひとつずつ浮かびあがりつながりを見せ始めている。そして、女であるということの感覚もまた違う色合いが加わって、自分の中で変化している。
月の香りを感じたり、黒色の官能を選んだり、揺れるスカートで現実を少し覆って、ひとりにやりと匂いに潜む秘密の記憶を楽しむ。言い訳の赤は太い指でぬぐってもらう。お湯の中に体を沈めて、耳までそっと入れる。目を閉じる。滲む色を味わう。揺らぐリズムに身を委ねる。
そして、わたしは今年もやっぱり、きらきらと楽しんでいる女性たちに魅かれるのだろう。その愛らしい人たちに、温かい腕を差し出す男の人には ”がんばってね~”とおせっかいのエールを送ることも忘れないでおこう。
皆さん、2015年も彩り豊かな素敵な日々を。
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